小学校低学年のうちや、中学受験をスタートしたばかりの場合、算数の文章問題で苦戦することはよくあります。しかし、本人は何が原因で解けないのか分からないため、「解説を読んでみたら?」というアドバイスは実は役に立ちません。
まずは、問題を解くためのプロセスを見える化して、思考方法を定着させましょう。
そもそも文章題が解けない原因は?
そもそも、文章題が解けない原因というのはどこにあるのでしょうか。大きく分けると、次の3つでしょう。
問題文が理解できていない
一番に考えられる原因は問題文が正しく理解できていないことです。どういう条件なのか、何を聞かれているのか、分からない可能性があります。普段見ている文章題より長文だったり、知らない言葉が使われたりしているとまったく理解できていない可能性すらあります。
理解できない場合は問題文を音読することで、どこでつまずいているのか本人も親も客観的に判断しやすいです。一応聞かれたことは分かっている、という場合はどう解くべきか分からないということなので、後述する方法でトレーニングすると効果がでます。
算数の知識が定着していない
低学年の場合、算数の知識の定着不足という可能性もあります。たとえば、長方形は向かい合う辺の長さが等しいとか、内角と外角の関係とか、学校でも習ったはずことが、実践レベルで定着していないということです。先ほどの例でいうと、四角形や三角形という単元のテストでは100点が取れても、実際に文章や別の図形と組み合わせた場合に使えないということは、正しく理解できていない場合も考えましょう。
計算力が足りない
数が大きくなったり、小数や分数になったりすると計算ミスが発生しやすくなります。また計算が、ただの答えを出す作業になっている場合、実はその計算が持つ意味まで考えていなかったという場合があります。計算練習をすることも大事ですが、かけ算ってどういうこと?わり算ってどういうこと?などと説明できているか確認した上で鍛えた方が効果的です。
分かっても出来ない場合の対策
上記の問題をクリアしても解けない場合は、算数の問題を考える手順が定着していないことが考えられます。算数ができるようにするためには、必ず乗り越えなければいけない難所ですが、一部の天才児を除いて、子供が勝手にできるようなものではないため、大人がサポートしてあげると良いです。
問題を解くための手順とは?
りんごが1個ありました。3個もらうといくつになりますか?
このような簡単な文章題であっても頭の中では次のような手順を踏んでいます。
- 条件を整理する
- 解法を考える
- 解法通りに計算する
つまり、この手順を見える化すれば、問題を解くための手がかりが見つかりやすいということです。それでは各工程ですべきことを順に説明します。
条件を整理する
文章題は一問一答形式のものと、1つの大問の中に複数の小問が入っていることがあります。どちらであっても、頭の中だけで解こうとすると忘れたり、ミスしたりするので、前提条件を整理してから次のステップに取り掛かかります。
整理する方法としては、図や表で表したり、分かっている数値をすべて書きこんだりします。低学年の場合は線分図やテープ図などを書く練習から始めましょう。問題文を読んで理解したつもりでも、覚えておくためのワーキングメモリーを使っている状態のため、解法にたどり着きにくいです。しかし図を書いておけば、覚えておく必要がなくなるため、図を見ながら図で考えたり、法則を見つけたりすることが容易になります。
解法を考える
条件が整理できたら、解法を考えます。しかしその前に、必ず何を聞かれているかを再度確認しましょう。オススメは問題文を読んでいる時に聞かれていることに線を引いておき、解法を考える前にもう一度見ることです。小問が複数ある場合はもちろんですが、一行問題であっても、条件整理したところで、何を聞かれているか忘れていることがあります。
解法を考えるコツは、どの値を出さなければいけないのか明確にすることです。A+(B-3)と計算する場合、AもBも問題文に数値が書いていなければ、AとBの値を出してから、計算するでしょう。しかしAを求めるのにそこそこ苦労すると、それだけで満足して、その後の手順を踏まずに答えに書きこんでしまう可能性が高いです。
そのため、慣れるまでは解法をメモしておくと良いでしょう。
解法通りに計算する
当たり前ですが、解法を分かっていてもその通りに解いていなければ正解にはなりません。計算間違いも同じです。
先ほどメモした解法通りに計算式を立てて、順に計算していきます。答えが出せたら、聞かれている事と答えが合っているか、単位がついているかなどのチェックをしましょう。
手順を定着させるためのノートの工夫
手順を説明したところで、子供が1人で再現するのは難しいです。まずは手順を定着させるために1行問題などをノート見開き2ページで解くことをオススメします。具体的なノートの作り方としては下の図のように、手順をあらかじめ書き込んでおくことで、やるべき事が見えて、解きやすくなります。

まず問題文を切り取り、左のページの上部に貼ります。次に、①~③の工程をカラーペンで書き加えます。左側のページの下には答えの欄も作っておき、確認事項をメモします。筆算スペースは指定しなくても良いですが、少なくとも、左端に書くように口頭で指示を出します。
最初のうちは、この形式で1日1問解いていきます。型がある程度身に付いたら、問題文を貼りつけるだけで、あとは見本(テンプレ)を見ながら手順通りに解いてもらいましょう。
わが家の場合、ノートの1P目に簡単な例題と解き方のサンプルを2問記入してあります。困ったら、最初のページを見れば何をするか分かるという方式です。
できないをできるにする過程を教えよう
文章題が出来ない子に「問題文をよく読んで」と言っても本当に読むだけで終わることもあるでしょう。解法を教えればある程度は解けるようになってしまうので、親も子も出来ている気になります。しかし結局のところ、見たことのない問題を目にすると解けないということが繰り返されてしまいます。
始めての問題を解くには、自分の頭で考えて答えを導くという過程を知ることも大事です。1つ1つの解法ではなく、手順を身に着けることで、文章題が得意な子に近づきましょう。